看護師は専門的なスキルを持ち、病院や診療所、高齢者向け施設など多方面から求められる、需要の高い職業です。
看護師の給与は比較的高く設定されていますが、周囲の看護師の貯金額や平均収入を知る機会はあまり多くないかもしれません。
そこで今回は複数の調査をもとに、看護師の平均貯蓄額や平均給与、他の業種の平均給与などをまとめてご紹介します。貯金をする目的や、貯金額を大きくするコツ、副業や転職で収入アップしていく方法など、さまざまな視点から看護師の貯金について掘り下げていきます。
まずはじめに、看護師の平均貯金額を調べた調査結果を見ていきましょう。
<平均貯金額>
看護師全体の平均貯金額は、50万円未満の人が全体の16%ともっとも多くなりました。次いで50万円~100万円が14%、100万円~200万円が13%となっています。また、7%の人が貯金額0円と回答した一方で、1000万円以上貯めている人が6%と大きな開きがありました。
を見てみると、20代の看護師の4人に1人が100万円~200万円の貯金となりました。30代になると貯金が1000万円以上となる割合が15%と増えています。貯金をしていない割合は、20代よりも30代のほうが多くなっており、30代はライフイベントなどで出費が多い傾向があると予想できます。
<平均貯金額・月額>
々の貯金額は3万円~5万円という人の割合が最も多く、次いで5万円~10万円と1万円~3万円という人が多い傾向にあります。
<平均貯金額・年間>
年間で見ると、だいたい30万円~60万円と算出できます。
調査を見てみると、貯金額は必ずしも年齢とともに増えるわけではありませんでした。20代前半で100万円以上の貯金がある人もいますが、20代~30代と歳を重ねても貯金額が増えていない人の割合も目立ちます。
この結果の背景には、結婚・出産といったライフイベントの影響が考えられます。マイホーム購入や養育費などの出費が増えるのに対し、産休・育休中は収入減が避けられません。そのため、20代後半から30代前半にかけては、貯蓄を増やすよりも蓄えを使う時期に入ってしまい、貯蓄の増加が抑えられているのではないでしょうか。
また、同じ看護師の中でも、常勤の看護師に比べて にあります。全世代を通して、非常勤の看護師は貯金額が50万円未満、または貯金できていない人も目立ちました。非常勤の看護師は手取りが少なかったり、昇給・昇進がしづらかったりすることが影響している可能性があるでしょう。
続いて、全業種の平均貯蓄額と年齢別の貯蓄額を紹介します。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年)」では、単身者世帯の平均貯蓄額は653万円、中央値は50万円という結果が出ています。
これに対して、金融資産を保有している人の平均貯蓄額は1,044万円、中央値は300万円です。金融資産を保有していない人も含めた回答と比較すると、かなりの開きがあります。
平均値 | 中央値 | |
20代 | 113万円 | 8万円 |
30代 | 327万円 | 70万円 |
40代 | 666万円 | 40万円 |
50代 | 924万円 | 30万円 |
60代 | 1305万円 | 300万円 |
平均値を見ると各世代それなりに貯蓄があるようですが、中央値はかなり低くなっています。このことから、平均を大きく超える貯蓄を持つ人が平均値を引き上げてしまい、実際は平均に届かない人が多いと読み取れます。
看護師の平均年収は、勤務先の医療機関や地域により多少差はありますが、約450万円~500万円です。ボーナスを除いた平均月収では、33万円~35万円程度となります。看護師は女性に多い職業ということもあり、男女の給与差も少ないのが特長です。
なお、上記の看護師の給与には残業代や夜勤手当が含まれています。夜勤のない外来診療のクリニックや子育てのため時短勤務をしている看護師は、もう少し低い給与となるでしょう。
また同じ看護師でも、准看護師・看護助手となると、平均年収は300万円~400万円にまで下がります。
令和元年の民間給与実態統計調査では、全業界を含んだ平均年収は436万円となっています。
男女で比較すると男性は536万円であるのに対し、女性は295万円となっており、男性の6割にも満たない金額です。平成29年・平成30年と比較すると、わずかながら男女差が埋まるような動きはあるものの、追いついているとは言えません。
平均給与の伸び率は全体としてみると増加傾向にありますが、令和元年はマイナス1.3%となっています。社会情勢や経済の動向によっては、伸び率のマイナスが続くこともあり得ます。
こうした給与事情を考えると、出費を抑えて貯金を増やすのは難しいところですが、万が一への備えはしておくべきでしょう。
世間一般の看護師は、どのような理由で貯金に取り組んでいるのでしょうか?給与の残りをとりあえず貯金している方もいれば、何か目標があって貯金を頑張っている方もいるでしょう。
ここでは、代表的な5つの貯金理由をご紹介します。
看護師の貯金理由の一つ目は、新型コロナウイルスの影響への備えと、収入減のカバーです。
2020年、新型コロナウイルスが世界的に広まり、社会情勢や経済に影響を与えました。レバレジーズメディカルキャリア株式会社の調査によると、約50%以上の看護師が給与減となっています。
コロナ患者に直接関わる看護師と、そうでない看護師を比較すると、直接関わらない看護師の方がやや給与減を感じている人が多いです。また、10%~20%程度の減額となった看護師が2割以上となっており、医療の最前線で働く看護師の過酷さが伺えます。
こういった不測の事態はいつ何時、発生するかわかりません。いざというときの備えとして、ある程度の貯金をしておきたいものです。
参考:レバレジーズメディカルキャリア株式会社
コロナ患者に直接関わる看護師の50%超が給与減【看護師の労働環境 実態調査】
看護師に限らず、病気やけがが原因で収入がとだえるリスクに備えて貯金をすることは重要です。
医療現場で働く看護師は、様々な感染症リスクにさらされているのはもちろんのこと、日常の中でも不慮の事故に巻き込まれる可能性もあります。
病気やけがへの備えは、社会保険・民間保険でも補えますが、手元にすぐ使えるお金があると安心です。
万が一、半年~1年の長期にわたって就労不能になると、治療費だけでなく生活費も不安材料の一つになります。社会保険による傷病手当金もありますが、給付額は通常給与の6割程度となっています。
また自身の病気・けがだけでなく、家族が働けなくなるケースも頭に入れておくべきです。突然働けなくなり収入がゼロになることに備えることが、貯金の目的となり得ます。
将来への備え、老後の収入減を見こして貯金を行うケースもあります。
総務省の「家計調査」によると、世帯主60歳以上の無職世帯は、1か月あたり約24万円の生活費が必要といわれています。
これに対して、公的年金の受給額は月額153,049円であり、不足するのは明らかです。退職金もなく、定年後の収入が公的年金のみであるなら、貯金によって補填するしかありません。
仮に65歳で定年退職し、退職金なしで女性の平均寿命とされる87歳までの22年間に必要な貯金額はいくらになるのかシミュレーションしてみましょう。
【退職後の22年間に受け取れる公的年金】
153,049円×12か月×22年間=約4,040万円
【退職後の22年間に必要な生活費】
240,000×12か月×22年間=6,336万円
【退職後の22年間に不足する金額(必要な貯金額)】
6,336万円-4,040万円=2,296万円
このケースでは、退職後に約2,300万円の備えが必要であるとわかりました。
公的年金の受給額は加入期間や納付期間によって変動するため、誰もが同じ金額を受け取れるわけではありません。今後、年金の受給開始年齢が65歳よりも繰り上げられる可能性もあります。
平均寿命や生活費も人により違いがあるため、一概にはいえないところもありますが、老後の収入減は確実であるため、貯金があると安心です。
今後のライフイベントへの備えとして貯金に取り組む方もいます。
ライフイベントは人それぞれですが、人生の節目に起こりうるものです。例えば転職を考えている場合、すぐに次の就職先が決まれば収入は途切れませんが、無職になる期間が生じることもあるでしょう。3か月程度収入がなくても、生活費の心配をしなくて良いように50万円~60万円ほど用意しておきたいところです。
結婚も人生の大きな節目であると同時に、様々な出費があるライフイベントです。結婚式はもちろん結納や結婚指輪、新婚旅行、新居への引っ越し費用などを合わせると、数百万円にもなります。
結婚後には出産や子育てもあり、教育費は子ども1人につき1,000万円~2,000万円はかかるとされています。配偶者が負担してくれる分や実家からの援助があるとしても、計画的な貯金が必要になるでしょう。
ように、様々なライフイベントに備えて、計画的に貯金をする方も多いでしょう。
自分がやりたいことを実現するために、貯金を頑張るケースもあります。
短期留学への挑戦や、専門施設に行く必要のあるダイビング、楽器の演奏などの趣味はお金がかかります。旅行も滞在先によっては高額な費用がかかる可能性があります。
こうした自己実現やプライベートを充実させるため、貯金している人もいます。
ここからは、今すぐできる貯金のコツを4つ紹介します。貯金を継続・成功させるため、ぜひ実践してみてください。
貯金を成功させるうえで、目標金額と貯金目的の設定はとても重要です。ただ何となく、やみくもにお金を貯めるというだけでは、モチベーションが保てなくなる可能性があります。
そこでぜひ、試していただきたいのは、ご自身の目標金額と貯金目的を明確にすることです。具体的な目標が決まれば、目標達成時のイメージも湧き、貯金を成功させたいという意欲に繋がります。
さらに目標金額は、月々の小さな目標に落とし込み、具体的な貯金プランを立てていくことが大切です。
毎月残ったお金を貯金するのではなく、先に貯金額を差し引いておくのが貯金の基本です。
給料日にはまず、貯金に回す分の金額を生活費と分けるようにしましょう。そして貯金する分のお金は、貯金用の口座に入れるなどして、日々の生活費として使えない状態にしておきます。
すぐに出金できないよう、定期預金を利用し、給料日に一定額を入金するのも先取り貯金として良い方法です。こうして貯金分を先取りした残りで生活費をやり繰りすると、自然と貯蓄を増やせます。
確実に貯金を続けるには、なんとなく継続利用しているサブスクや、固定費の見直しも重要です。
定額で使い放題になるからと契約したサブスクでも、あまり利用していないなら無駄な出費といえます。月に数百円程度であったとしても、1年で考えると数千円以上になりますよね。
家賃や光熱費、通信費などの固定費にも無駄がないか見直してみましょう。契約プランを変更することで、金額が下げられることもあります。
こうしてサブスクや固定費を削減し、浮いたお金を貯金するようにしましょう。
貯金を成功させるには、転職や副業が必要なケースもあります。貯金には、支出を減らすか収入を増やすかの2つしか、選択肢はありません。
先取り貯金や固定費の見直しは、支出を減らす方法ですが限界もあります。可能な限り無駄を見直して削減しても、貯金に回すお金が用意できない方は、そもそも収入が低い可能性が高いです。そのような場合、収入を増やす方法を考えるのが先決です。
今の職場で昇給・昇進が望めるなら、それを目標とするのもよいでしょう。しかし、もし昇給・昇進の見込みがないのであれば、転職や副業を検討する必要があるかもしれません。
給与・待遇の良い職場に転職する、空いた時間を使った副業で収入源を増やすといったことも、貯金を成功させるコツです。
今回は看護師の貯金・収入事情を解説しました。他業種と比べると収入が多いとされる看護師ですが、他の職業にはない夜勤手当を含んでの金額であると考えると、決して高給とは言い切れない実態が明らかになりました。
看護師の方も不測の事態に備えたり、ライフイベントや趣味のために、精力的に貯金に取り組むべきです。
貯蓄を増やすためには、まずは記事内で紹介した貯金のコツを実践して、支出の無駄を削減することから取り組むとよいでしょう。
ただし、生活費を切り詰めてもなかなか貯金が増えないこともあります。今の職場での昇給・昇格を目指すだけでなく、転職や副業も視野に入れ収入を増やす方法を検討するのも一つの手段です。
「家計管理や貯金について見直したい」「お金の悩みを解消しつつキャリア相談をしたい」という方は、看護師専門の転職エージェント、MRTグループのNOSnaJOBを頼ってみてくださいね。NOSnaJOBでは、看護師・医療従事者向けのキャリア支援だけでなく、ファイナンシャルプランナーによる無料相談会も実施しています。
無料相談はこちらからご予約ください。
LINEでの問い合わせや相談も行なっております。