近年、本業以外に副業をする看護師も増えています。なかでも、株式投資は人気があり、副業として検討している人も多いのではないでしょうか? 株式投資を行うなら、そのメリットや副業の注意点などしっかりと理解することが大切です。
今回は、看護師が株式投資で稼ぐための基礎知識や副業の注意点などを紹介します。副業・兼業をするか迷っている看護師や、投資での収入アップを考えている看護師の人はぜひ参考にしてください。
実際のところ、看護師の副業は問題なくできる場合とそうでない場合があります。民間が運営する病院と地方自治体が運営する病院によっても、副業の規定は異なります。
まずは、自分が副業できるかどうかについて、詳しくみていきましょう。
民間が運営する病院では、副業OKの病院とNGの病院があります。まずは病院の就業規則をチェックし、副業の規定について記載があるかどうかの確認が必要です。
しかし、副業が禁止されている病院でも、交渉次第では副業がOKになるケースもあります。日本では、働き方改革の一環として厚生労働省が「モデル就業規則」を定めています。2018年には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定され、「モデル就業規則」から副業の禁止に関する規定が削除されました。「モデル就業規則 第14章副業・兼業」には、以下のような記載があります。
「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」
つまり、国としては副業を認めていることになります。そのため、病院への交渉次第では、副業が認められる可能性も高いといえます。就業規則で副業が禁止されている、または記載がないという場合は、会社に交渉するのがおすすめです。
地方自治体が運営する病院に勤務している場合、副業はNG。国立や都立、市立などの病院に勤務する看護師は公務員であり、公務員の副業は法律で禁止されているためです。
国家公務員法の第103条では、以下のように記載されています。
「職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。」
また、地方公務員法の第38条には以下のような記載があります。
「職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。」
公務員の看護師は副業ができないため、くれぐれも注意が必要です。
政府が副業・兼業を推進するようになったことから、「本業に支障のない範囲であれば」「許可を得れば」など一部条件付きで副業をOKにしている民間の病院が増えています。
「モデル就業規則第14章67条副業・兼業」には、以下のような記載があります。副業をする場合、「本業に支障をきたさない」「企業の情報漏洩を防ぐ」といった副業の基本的なルールを守ることが大前提です。
次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合」
(引用:モデル就業規則)
モデル就業規則があることで、勤務先の病院に隠して副業をしても、バレてすぐに懲戒処分になるケースは少ないでしょう。しかし、トラブルになる可能性はあるため、副業を始める前に一度職場に相談するようにしてください。
副業・兼業ができるかはケースバイケースであることがわかりました。それでは、看護師をしながら株式投資をするのは、副業になるのでしょうか? どこまでが本業で、どこから副業になるのかを判断するのは、非常に難しいものです。
ここからは、看護師の株式投資が副業になるのかについて詳しく解説します。
副業は一般的に、本業以外に収入を得る仕事という認識があります。しかし、実際の副業に明確な定義や決まりはありません。副業の定義は会社の就業規則に沿うものとなり、会社ごとに異なります。つまり、どのような行為が副業として認められ、何が違反とされるかは、会社によって変わってくるのです。
そのため、本業と副業の線引きは曖昧な点も多く、個人で判断するのは非常に難しいといえます。副業について不明点があり、就業規則に目を通しても疑問が解決されないとときは、会社の総務や人事部に問い合わせるのがおすすめです。
本業・副業の線引きは難しいものの、株式投資は副業ではなく、資産運用に含まれるのが一般的です。
基本的に副業は、自身で事業を行う、または他の会社で働くといった労働の対価として報酬を得る行為に使われます。一方で、株式投資や不動産投資、FXなどの投資は、労働ではなく資産を動かして収入を得る「資産運用」、つまり不労所得に分類されます。そのため、副業が禁止されている病院に勤めている人や公務員であっても、株式投資で収入を得ることは可能です。
しかし、「勤務時間に株の売買を行う」「株式投資が本業に支障をきたす」といった場合は、会社の就業規則に違反することになるので処罰を受ける可能性があることに要注意。
看護師が株式投資で稼ぐためには、株の基本的知識や仕組みについて理解しなければなりません。株式投資は、単に株を売買すれば稼げるというものではなく、場合によっては損をすることもあります。
ここからは、実際に株式で収入を得たいという人向けに、株の基礎知識を紹介します。
株式投資の最大の魅力は、売却益(キャピタルゲイン)や配当金(インカムゲイン)、株主優待を受け取れることです。看護師の仕事で稼いだお金を、休日やスキマ時間を使って効率的に増やせる点は、大きなメリットになるでしょう。
看護師の仕事は体力勝負な面も多く、休みの日まで体力を使って働きたくないと考える人も少なくありません。株式投資なら、パソコンやスマホがあればいつでも投資ができます。休日に体力を温存しながらお金を増やせるのは、資産運用ならではのメリットといえます。
副業が禁止されている病院でも、資産運用に分類される株式投資はOKとなりやすく、副業をしたい人にとって魅力的に感じる部分も多いでしょう。
株式投資で得られる利益の1つに、売却益があります。売却益とは、購入した時の株価よりも、売却した時の株価が値上がることで差額による利益を得られるものです。反対に、購入時の株価より売却時の株価が安ければ、損益が生じます。
たとえば、ある企業の株価を4,000円で100株購入します。すると2年後に株価が上昇し、株価が5,000円になりました。この時、持ち株である100株を売却すると、10万円の利益が生じることになります。
売却益は短期間で大きな利益を得られる可能性があり、ハイリターンを求める人に向いています。しかし、その分株価が暴落するリスクもあります。売却益を目的に株式投資を行う場合は、株価の動向をよくチェックし、売買のタイミングを慎重に見極めなければなりません。株投投資に慣れている人に向いている利益の出し方です。
企業が株主に対して自社の商品や優待券などを提供するのが、株主優待です。株主優待は、一定数以上の株を保有する株主に対して提供されます。優待内容は食料品や飲料、日用品、ギフトカード、食事券など企業によってさまざまです。また、株主優待は、実施している企業とそうでない企業があります。
株主優待を目的に株式投資を始めるなら、身近にある商品やサービスの企業の株を選ぶのもおすすめです。「看護師の副業に株式投資をしたいけれど、ハードルが高く感じる」といった場合は、株主優待からスタートしてみるとよいでしょう。
企業が利益の一部を株主に配当するお金のことを指したのが、配当金です。配当金は、決算期ごとに分配され、企業の業績によって増えることも減ることもあります。また、配当金がない場合もあります。
配当金は短期的な値動きに捉われず、安定的にリターンを得たい人に向いています。「リスクをできるだけ抑え、長期的に株式投資を始めたい」といった看護師におすすめの投資方法です。
証券取引所の取引可能時間は、平日の9時~15時半(東京証券取引所のみ9時~15時)までです。この場合、平日に仕事をする人が投資をするのは難しく感じるでしょう。しかし、ネットで株の売買注文を行う証券会社は、ほぼ24時間利用することが可能です。ネットによる立会時間終了後の注文は、翌日分として扱われます。
平日や日中は仕事で忙しいという看護師も、ネットをうまく利用すれば、無理なく空いた時間に株式投資ができます。不規則な生活になりがちな看護師も、手を出しやすい投資方法といえるでしょう。
株式投資が病院側に発覚してしまうのは、給与天引きの形で納付する住民税に理由があります。住民税は、収入に応じて納税額が決定する仕組みです。そのため、納税額が給与よりも多く計上されることで、病院側に給与以外にも収入を得ていることが発覚してしまうのです。
対策としては、源泉徴収ありの特定口座を使用するのがおすすめです。源泉徴収をした後の利益は、所得に合計されることがなくなります。また、証券会社が代行して納税を行うため、自身で確定申告をする必要がありません。さらに、確定申告時に「普通徴収」にチェックを入れ、自分自身で住民税を納付するようにすることも大切です。
実は、株に失敗する医療従事者は多いといわれています。その理由は、医療従事者の社会的地位の高さにあるでしょう。社会的地位が高いということは、その分投資関連の話を他方面から持ちかけられる機会も多いということです。医療従事者が怪しい投資家に騙されて大損し、貯金を全て失くしたという失敗談などを耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
また、医療業界と株式投資の価値観の違いも少なからず影響しています。医療業界は、患者さんの命を助け、病気を治すことが第一優先となります。そのためビジネス界における競争とは一線を画している部分があります。医療従事者はビジネスを苦手とする傾向もあり、安易な気持ちで投資に手を出すと、失敗する可能性が潜んでいるのです。
看護師が副業で株式投資を始めるなら、本業への支障が出ないように十分配慮することが大切です。また、リスクをしっかりと理解したうえで、投資金額や投資方法を選ぶ必要があります。
注意点をおさえれば、看護師が株式投資で稼げる可能性は大いにあります。まずは、株式投資で収入を得たい場合は、少額から株式投資をスタートさせ、安定的な資産運用を目指してみることをおすすめします。